詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
。あしたは誰かと会ったのかい?」
「え……」
母はどことなく遠慮がちだったけれど、私は一瞬うろたえてしまった。
「どうして?」
「だっておまえ、あしたは早出だったのに、帰りが遅かったじゃないか」
たしかに遅かった。
父も母も晩婚だったけれど、七十をすぎた母とふたり暮らしの娘の歳は、言わなくてもわかる。そんな私にようやく彼氏と呼べる男ができて、いつか母に打ち明けようと思っていた。
「ね、かあさん。久しぶりだから、喫茶店に寄ってお茶呑んでいこうよ」
「喫茶店? まただれかと会うのかい?」
母はもう気づいているかもしれなかった。
「うん、そうよ。かあさんも会いたいでしょう?」
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