詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
?」
「だれに?」
「私のボーイフレンド……」
「いつ?」
「きょう、これからよ」
「……」
「いやなの?」
「ん、きのうなら都合がいいんだけど、あたし……」
「また、そんなへんなこと言って。ね、行きましょう」
街中を抜けて海岸通りに出ると、彼が営む喫茶店があった。マッチ箱みたいなちいさなお店は、いつも潮風に吹かれてハミングしていた。どうしても、まっすぐ家に帰りたくなかった師走の夕暮れ、私は初めてそのお店にラパンを止めた。そして、彼と出会った。
「いらっしゃい!」
お店のドアをあけるといつもの元気な声がした。
ラパンから降りる母の姿を彼は見逃さなかった。満面の笑
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