詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
日分の食材の入ったレジ袋などがならんでこぼれ落ちそうだった。
街中の路面はまだ濡れている。
「かあさん、かわいいブラウスが見つかってよかったわね」
「そうねえ、まだ着れないけど……」
うれしくても、うれしそうにしないところが頑固者なのだ。
信号待ちの交差点でスマホが鳴った。
「圭子。電話だよ」
「あ、いいの。ラインだからだいじょうぶ」
発信者はわかっていた。
「ラインは出なくてもいいのかい?」
「急がないときはラインなの」
「ややこしいのよ、それって。だからあたしは嫌いだよ」
母にもスマホは持たせてある。もしものときに位置情報を得るためだった。
「ねえ、圭子。あ
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