詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その3。+あとがき/たま
ろうか。だったらもう、あっさりこのわたしのいのちひとつ捨てるだけでいい。
わたしの詩は燃える塵みでしかない。
夢の入口にさいごに残った塵みは、どこまでも分別を拒みつづける、わたし自身のいのちだったのだ。
縄文の犬
わたしは縄文の舟を漕いでいる
クスノキを刳り貫いた
粗末な舟だ
赤い犬をいっぴき乗せていた
これが最後の猟だと
わたしはおもった
子どもたちは
夏の来なかった時代を知らない
もう
危ない猟をしなくても暮らしてゆける
海はあんなに近くなって
魚も貝も
たくさん獲れるようになった
おい、骨になるときは一緒だぞ
わたしの低い声
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