詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
ロンパンをかじりながら、海水浴場のほぼ中央にある料金所で一日千円の駐車料金を支払って、とろとろと、遠慮がちに入場する大小さまざまな車を眺めていた。
 七月初旬だった。しごとを得たいというたしかな意思はあったが、身支度も調わないままに、こんなところに投げ出されたのだという気がして、ついこの時間帯は手持ち無沙汰になってしまうのだが。それはわたしの不服にちがいなく。じゃあ、なにが足らないのかと問われてもなにもおもい当らず。ここにあるものは、燃えたぎる太陽のひかりを攪拌しつづける蒼い海と、風と、しろい砂浜だけだとしかいえなかった。
 もちろん、海水浴場なのだからそれですべては足りるとしても、ここではた
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