炎の中で書き続けている/haniwa
僕の言葉に意味なんてない
君の言葉にも意味なんてない
だからもう、ペンを走らせるのをやめて
その手を、僕の方にのばしてくれないか
僕も、君の方に手をのばすから
随分長いあいだ、僕たちは言葉を介して何かをつたえようとしていた
けれども、その結果得られたものは
机の上にあふれかえる原稿用紙と空になったインクの瓶だけ
冷房の効きすぎたこの書斎には
ときおり、原稿用紙を好む山羊がやってきて
夥しい言葉の中から気に入ったものをいくつか選んで食べる
そして山羊はとても嬉しそうに僕と君に礼を言う
でも僕らは山羊を喜ばせるために言葉を連ねているわけじゃない
僕らには言葉しかないと
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