鏡像 【改訂】/リリー
 
尋ねる。この時、初めて亡き母との七年間に渡
 る闘病生活を彼に語った。
 
  市民病院に長期入院していた一人親の母は、身辺介助で若い看護婦さんの
 手を煩わせる事へ躊躇した。尿の管が取れポータブルトイレになると、自分
 を情けながり真夜中でも容器の処理を私へ小まめに求めた。早朝の身体の清
 拭、洗髪や入浴介助も私には初めての経験だから上手く出来るはずも無かっ
 たのだ。
  洗い物は自宅の洗濯機でと希望する母の為、運転免許を持っていない私の
 通院は大変で、地元に住まう母方の叔母が協力してくれた。
  明け方に病院の屋上で、手摺にもたれながら鉄道をながめた日、走り去っ
 て
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