くれないの風のうた/秋葉竹
そうやってあたしたちは
その歌が聴こえてくるのを
信じて待っていた
今夜こそありがとうと云えるという
溶け始めたグラスの氷みたいな嘘を
溶かさないように気をつかいながら
だれもいない夜空に向かって
綺麗な風が吹く海辺の孤独から
聴こえない嗚咽がこぼれ出すから
堰を切ったように溢れ出した言葉を
ありもしないやさしさを込めて
サイコーの歌だって信じ切るのさ
嘘でもかまわないが嘘なんかじゃないって
今夜だけは見逃さないで
今夜だけは強くなって見栄を張って
なにもドラマなんかじゃないけど
大丈夫なんだっ
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