入退院後の日記/由比良 倖
分からない。僕にもニックにも、多分誰にも分からない。
手のひらにいっぱいの錠剤をウォッカで飲み下してから、次に目覚めるまで、丸二日間の記憶が飛んでいる。まるで自分が新たな世界に移送されたかのような。医者が僕の名前を大声で何度も呼んでいたと思うけど、それも朧気で、気付くとベッドの上に、当たり前のようにいた。尿道からカテーテルを抜かれたときの気持ち悪さを覚えているような気もする。ぬめぬめした悪夢のような時間が、あったような気もする。何にも無いような気もする。二日間の間、僕は何処にいたのだろう? その間の、断片的で取り留めのない感覚や思考が、残っているような感じもする。半分だけおかしくて、同時に完全
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