音楽と精霊たち?/朧月夜
 
らなかった」と葉子は思う。学生時代に作曲が出来なかったのは必然だった。バンドメンバーにも誘われたが、彼らは彼女よりもずっと多くの努力をしていた。1つの曲を作るということは、音楽の歴史そのものを学ぶことに等しかった。

 いつか、誰かの詩に音楽を付けたい、と葉子は思った。それは萩原朔太郎の詩でも良かったし、立原道造や中原中也の詩でも良かった。日本らしい、日本人にしか作れない音楽が作りたかった。それが、今の葉子には出来そうに感じられた。

(あの日のことは何だったのだろう)

 と、葉子は時折考える。少なくとも、狂気や病気ではない。芸術という「虚構の世界」に取り憑かれたわけでもない。ただ、
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