腹じゃないものが飢えてる/ホロウ・シカエルボク
あった、火事の最中に溺死する夢、ディティールはもう思い出せない、結果そんなシチュエーションだけが忘れられた旗みたいに静かに揺らいでいる、十年経っていようと突然記憶の中で鮮やかに息を吹き返す夢もある、たった一度しか見てはいないのに、タンブラーで水道水を飲む、床に落ちたスナックを掃除機で吸い上げた、カーペットは本来の色を取り戻した、どいつもこいつも大人になったような口をきくけれどそれはただ汚れただけのことさ、浴室で正しく身体を洗うことが出来たら様々なことを思い出すだろう、でも誰もそんな方法を知らないんだ、掘り下げるということをしないせいさ、川の側にあるこの住処じゃ余程の温度じゃなければ冷たさに負けてし
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