昔の駄文「嫌いなもの」/佐々宝砂
いことはない。それは彼を安心させるゆりかごとなり、彼にやる気を起こさせ、生きる意欲を与える。そこで彼は「男らしい男を是とする」道徳をおしすすめる。それは容易に伝染し、発展し、類似の道徳を生み、さらに思想や主義や宗教へと進化する。こうなると、もう偽装なのかそうでないのか誰にもわからない。その思想なり宗教なりに一生を捧げる人も出てくるし、大学でそれを研究する人も出てくる。組織化をすすめて学校や病院を作ったり、ボランティアを推進したりもする。もとが何だったとしてもこうなりゃ立派なもんだ。場合によっては、なけなしのお金を寄付してあげようという気にもなる。
思想や主義や宗教。それ自体は悪いものじゃない
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