昔の駄文「嫌いなもの」/佐々宝砂
まれるのは、差別といじめだ。差別やいじめに正統な理由はない。障害者差別も女性差別も黒人差別も、自分と違うもの理解できないものを排除しようとする気持ちから生まれる。しかし、あからさまな差別やいじめは簡単に承認されるものではない。そこで差別は地下水脈にもぐり道徳を偽装する。偽装を見破るのは困難だ。それはたいてい、「よいこと」を奨励するというかたちをとるからだ。たとえばジェンダーの問題に話を限定するなら、「男らしい男」や「女らしい女」をほめたたえることによって、暗に「女らしくない女」や同性愛者や性同一性障害者を排除する。しかし「男らしい男」にとってみれば、ほめたたえてもらえるのだからこれほど気分のよいこ
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