石となりし人に/佐々宝砂
ノワ゛ーリスが仄かに憧れ語つたやうな
求めて得られぬ青い花の淨を
求め續けねばならぬといふ
矛盾の病其のものであつたらうに
其の人は
喘息を病んで
死んだが
彼の魂は
安寧にあるだらうか
其れとも何處かを彷徨してゐるだらうか
否 安寧でも彷徨でもなく
彼の魂は
彼自身が希つたやうに
石となつて空にゐる
何時までもさうしてゐるといふ譯でないが
今のところさうしてゐる
彼は多分
青く光る石――星となつて空にゐる
青い星は冷たげに見える
しかし本當は
非常な高温で燃えてゐるのだ
赤く情熱的に燃える
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