石となりし人に/佐々宝砂
えるかに見えるアンタレスなぞ
本當は低温の星なのだ
青い星こそは熱い星なのだ
彼は青く燃えてゐる
恐らく後五億年は燃えてゐるだらう
石の生活は億年單位で計られるのだから
未だ石とならぬ私は
流沙河の妖怪と同じく
首に重たい頭蓋骨を吊してゐる
師と仰ぐべき人を知る事もないまゝに
身體の色さへ定まらず
彼方(あつち)と此方(こつち)を
同時に見詰める
氣の多い
南洋のかめれおんのやうに
彼方を向き
此方を向き
南洋の島よりも彩り多過ぎる世界で
我を見失ひ
其れでも何かの拍子に
{ルビ不圖=ふ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)