暗転 (旧作)/石村
 
ゆたかなひかり)
拡がり膨らみ全ては蒼然と傷つき
さりとて微笑んで此処に留まるすべもない
ときおり簡明な意志が晴れやかに海をわたつていくのを
ぽつと眺めてゐるやうな次第です
此処いらひじやうな論理が銀だの金だの層をなし
何か清冽な鬼神の群れが凛々しく棲まつてゐて
うつかりとはこたへられぬしづけさだから
まつさをなけだもののやうに潔癖に
こころない波濤を跳んではげしく挑戦し
海鳥(うみとり)の宗教をうたつてはみたけれども
吾等ただいそがはしく夏になり
何処から来たのか分からぬままに
薄くれなゐに水面(みなも)は色めき(そのいちいちはひややかだ)
私はうづうづと
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