メモ1/由比良 倖
 
ってそう。僕が言葉を作ったところで、誰にも伝わらないなら、それは言葉とは言えない。案外、何ひとつ道具を持たない方が幸せかもしれない。けれど今どき、それはほぼ不可能だから、今の人は、道具を使って幸せになるしかない。

 「自分」「自分」ばかりで精一杯の、今の僕に書けることなんて、ほんのわずかだ。まだまだ僕は理屈を書いているばかりだ。何も気にならない場所。不安も、恐怖も無い場所。それが確かに存在することを、僕は知っている。完璧しか欲しくない。完璧な快感、楽しさ、美しい瞬間、完璧な人との繋がり、……。
 それは得られるものではなく、取り戻すもの。もしくは単に、もう既にある完璧に触れること。それだけ
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