メモ1/由比良 倖
 
自己嫌悪もし始めて、それから人間も捨てたものじゃない、と思った。段々、本当に人が好きになってきて、嫌いとか、どうでもいい、が薄れてきた。今でもそれは続いている。「人間が好き」という言葉自体は、胡散臭いし、嘘が混ざっているから嫌いだけれど、「人間が好き」という気持ち自体はとても好きだ。
 ここ数年、僕はあんまり辛いから、仏教的な考え(それと少しのポストモダン的な考え)に縋ってみようか、と、多分あまり僕らしくない考えを起こしたこともあったけれど、それってひと言で言えば「全ては自分の思い込みだ」という考えで、でもその考えには他人の存在の美しさとか、愛情の要素が欠けていると思ったから、すぐに却下した。
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