メモ1/由比良 倖
 
。ふわっとした感じとか、酔った感じとは全然違う……。

 僕たちは運や実力だけで生き残ってきた訳じゃない。太古の昔から受け継がれてきたのは、勝利の歴史ではなく、きっと後悔や怖れや慢性的な疲れ、消すことの出来ない暗い記憶。遺伝子にはたしかに自殺のスイッチがある。人類の歴史とは、傷が集積されてきたことの歴史だ。誰も、心の流血を止めることが出来ない。胸の中ではいつも自殺のシグナルが光っている。愛や寛容の温度を大きく上回る、孤独の冷たさ。ある瞬間ボタンがカチリと外れれば、全ては終わってしまう。死んでしまう。それとも死んだように生きるようになる。その二つに違いは無い。「愛」だとか「倫理観」だとか言う、大
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