メモ1/由比良 倖
 
人が好きだろうが嫌いだろうが、そんなことはどうだっていい。……小さな部屋が好きだ。小さな部屋を感じる音楽が好きだ。心の中の掠れたメロトロンの音。忘れられた灰色の交信。一枚を通して宝物のように感じられるアルバムが好きだ。

 階段の脇に、薔薇が咲くように光が射していた。僕はプラグに繋がって別世界にいた。痩せて、乾いて、硬い血管を抱いて、身体だけは他人が怖くて、そのままだったけれど。リノリウムの剥げかけた緑の階段に、膝を抱えて、僕は誰ひとりいない世界で、光に包まれていた。内面の光だけが、無限の希望だった。僕は、死のうと考えていたんだけど。

 クラシック音楽は頁の裏側。詩の果実。

 ロッ
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