メモ1/由比良 倖
ロックを黄色い音で聴きたいときもある。酸っぱい音で聴きたいときも。大体のときは、モノクロ(単色)で、濃いセピア色か白黒の音で聴くと、頭の中が微熱で満たされて気持ちいい。
ギターの音は消えても、空中に残り続ける。それから、世界の裏側の虚空に。そこに挟まれた本に。ここにある、死んだ後の図書館に。
好きな音楽が増えるごとに、僕の世界は拡がっていく。そう広い世界でなくてもいい。古い石段や、白亜の壁に挟まれて曲がりくねった小路のある、水の街くらいでいい。ときどき都会が恋しくなるけれど、僕の帰る街は、いつも小さな静かな街だ。ニック・ドレイクのドキュメンタリーにそういう街があった。
僕の住み
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