メモ1/由比良 倖
 
真理はあるかもしれない。けれど、そこに僕はいない。理論や論理の中には、感情や四季が含まれないのと同じように。僕は「僕」を見たい。僕は、「君」を見たい。……昨日食欲無く鍋をつついていて、僕は鍋の中にしめじが浮いているのを見ていた。単にそれだけのこと。……個人的な生を生きて、個人的な死を死にたい。僕がひとりでいることには、何ら抽象的な思考は含まれない。それは端的な、事実だ。

 黄色い感じの、赤い感じの、青い感じの、細い、あるいは図太い音のギター。音楽の全体的な評価って宛てにならなくて、それはラブレターに点数を付けられないのと同じ。僕にとって、僕に向けて個人的に作られたと感じるアルバムを、他の人が
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