十六年ぶりに包丁を買う 冬待ち 二作品/山人
かに視界の先の空気をつんざくような色合いもまだない。
執拗なほど手入れされた山道は、「山を愛する仲間たち」というレッテルを付けた人々によって作業が進められたものなのだろう。仲間の少ない私には理解できない世界があるのだった。たがいに笑い合い、終われば「また来年もよろしくお願いします」と散ってゆくだけのつながりのために愛好家たちは集合する。
雨はかすかに降っていたが、雨具を着る必要があるかどうかという愚問を自分に投げかけていたのだが、少し肌寒くもあり防寒のために雨具を着たまま歩いた。
5月末からおよそ10kgの減量を行い、さすがに体は軽い。よって、はやる気持ちが体を前に前に進ませ、椿尾根と
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