十六年ぶりに包丁を買う 冬待ち 二作品/山人
しくなったのである。それは、子供の頃、欲しかったおもちゃを手に入れ、寝床の枕元に置いて眠り、目覚めるとそのおもちゃの存在を確認してホッとする、そんな心境に浸りたいと思ったのである。
包丁は、道の駅の中にある刃物専門店を訪問した。高いものは三万円台まであったが、手持ちのお金もさしてあるわけではなく、刃渡り二十四センチ全長三十八センチの包丁を買った。一万四千三百円であった。
体力も落ちて、山林仕事や山の整備もきつくなってきた。自然と体全体が、もっと楽をしたいと思い始めているのであろうか。今までは、包丁など二の次であり、とりあえず切れれば良いというものであったが、ここに来て包丁が欲しくなったとい
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