十六年ぶりに包丁を買う 冬待ち 二作品/山人
という心境は、如何なるものなのだろうと、何か不思議な気がするのである。
山小屋の調理はさして技巧などいらないが、それでもその末端として生きてきたという過去がある。ここいらでもう一度初心に戻れというわずかな鎹が芽生えているのであろうか。
冬待ち
好きな仕事であっても、それを取り巻く同僚の面子などが変わってくると、上司の態度も変わってくる。それを痛いほど知った年であった。それは定年をむかえ一線を退いたから故のものなのだから自然と言えば自然でもある。その自然なことを受け入れることが出来ず苦しんだ年だった。楽しかった十年は苦しみの一年のスタートだったのだと知る。
一昨日
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