十六年ぶりに包丁を買う 冬待ち 二作品/山人
であるが故、常連客を断れず仕事をとってしまい休日ではなくなってしまった。あちこちの掃除を終えてふと調理台を見ると包丁が錆びかけている。一番新しい包丁でも二〇〇六年製だからずいぶん前だし、鋼製だから錆びやすい。しっかりと水気をとっているのだが、何らかの水分が付着するのか日にちを置くと錆びが浮くようになってしまっていた。また研がなければならないのかという落胆とともに、あたらしい錆びにくい包丁を入手しようという気になっていた。
思い込み。というのは実に損をするものだということは最近分かったことなのだが、ある事柄を断定的に思い込むことで、一切のある種の考えをシャットアウトしてしまう傾向が私にはあるよう
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