奏でる/由比良 倖
 
こえるだけのこともあって、そしてこの楽器を使って、詩の音や旋律を同時に聞いた場合、或いは物語を聴いた場合、私は高い確率で意識を失ってしまう。あなたは「それは改良するべきことだろうか」、とあくまで社交辞令的な口調で言い、そして無論そのままにしている。
そして赤い鍵はあなたの一番苦心の作品で、これは見えないように取り付けられた、外付けのマイクと、それから一種のソナーと関連している。簡単に言うと、それはひとつには、完璧な無音を奏でるための鍵であり、そしてまた、奏者の精神や心の声そのものを鳴らすことを目的としている。しかしあなたは内面なんて言葉を、あまり本気で口にすることはないので、それは純粋な遊びの音
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