奏でる/由比良 倖
イザーに、少しの遊び心を加えたに過ぎないから、また、初期のシンセサイザーとほぼ同じ使い方だって、この楽器は出来るのだし「それでももう少し改良を加えれば、特にピックアップが問題で……」、とあなたは言い、そのときだけあなたは、少し疲れたような顔をする。
それから、もうひとつの音は、キーボードを使って打ち込まれた言葉、或いは、譜面台に乗せた本、楽譜、もちろん詩集、画集、図鑑や医学書、写真、それらを音や音階、周波数に変換することで、音色だけでなく、旋律を生み出すことも出来る。
本を読みながら目を瞑ると、微かに鳴るような音や、音楽が、言葉や詩から見つかることもあるけれど、ただ乾いて寂しげな風の音が聞こえ
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