奏でる/由比良 倖
た、繊細な振動を与えられた水溜まりに落ちると、その雨音と、微かな空気の揺れを、複雑に並び合ったピックアップが拾う。固有のそれらの振動、周波数を、真空管と美しい線の並んだ装置で、立体的に合成し、電気的に増幅して音を出す仕組み。
もうひとつは、中でひとつの季節、ある特定の時間の空気を再現して、それを言語化し、それを音色に変換する、もしくは、中の状態をひとつの化学物質と仮定して、それをそのまま音に変換することも出来る。これは、あなたの詩人としての、美しい直感を以てしか、為しえないことだけれど、あなたは気に入ってはいない。あまり美しくない、と言うのが理由のひとつ、もうひとつは、これは、既存のシンセサイザ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)