奏でる/由比良 倖
 
のキーボードのようなものに取り替えられた。私はそれを見て、興奮した。
プラスチックのような白に塗られた楽器の複雑な内部では、音を出す機構が三種類あって、ひとつは鍵盤を押すと箱の内部の上部から、あなたが世界中で集めてきた外国の雨が降るようになっていて(それぞれの雨には地名や詩人の名前が付いていて、その数は増え続けている。雨の種類や雨量は、つまみやレバーで切り替えたり、自由に配合したり出来て、いつでも新しい、見たこともない雨を降らせることが出来る。それを実現するため、あなたは不得手な電気工学と気象学を、一から学ばなければならなかった。それが夢の領域にまで達するまで)、その雨が箱の下部に薄く溜まった、
[次のページ]
戻る   Point(1)