奏でる/由比良 倖
分あなたがあなたの美感で何度も角度を変えて眺めては、段々に目立った装飾を減らしていったのだろう、色合いは平面的な白を基調とし始め、注意深く輪郭に曲線を取り入れ始めたために(私が見ている間、あなたは目の細かい紙やすりで、楽器をたったひと擦りしたり、そしてまた、私が鍵盤を押したり、つまみを回すと、音について、何かひとこと呟いたり、長いこと遠くを見るような目をしたまま黙っていたり)、全体としてひとつのシンプルな玩具のようになっていった。
ボタンやノブは段々に、現段階では数個にまで数を減らし、その代わり、鍵盤の右手側に、小さな、タイプライターのようなキーが取り付けられ、そしてそれはすぐにラップトップのキ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)