陽の埋葬/田中宏輔
。
脈拍は嘘をつくことができなかった。
?
あれは遠足の日のことだった。
車内に墜ちた陽溜まりを囲んで、
騒ぎ疲れた子どもたちが
みんな、とろとろと居眠りしていた。
ふたりは班が違っていたけれど、
となりどうしに坐って微睡んでいた。
自分たちの頭を傾け合って、
頭と頭をくっつけて、
ふたりは知っていた。
眠ったふりをして息をしていた。
透きとおるものが
車内を満たしていた。
ふたりだけの秘密。
少年の日。
?
だれが悪戯(いたずら)したのか、
胸像の頬に赤いチョーク。
部屋の後ろに掲げられた
木炭画
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)