陽の埋葬/田中宏輔
 

脈拍は嘘をつくことができなかった。


?

あれは遠足の日のことだった。
車内に墜ちた陽溜まりを囲んで、

騒ぎ疲れた子どもたちが
みんな、とろとろと居眠りしていた。

ふたりは班が違っていたけれど、
となりどうしに坐って微睡んでいた。

自分たちの頭を傾け合って、
頭と頭をくっつけて、

ふたりは知っていた。
眠ったふりをして息をしていた。

透きとおるものが
車内を満たしていた。

ふたりだけの秘密。
少年の日。


?

だれが悪戯(いたずら)したのか、
胸像の頬に赤いチョーク。

部屋の後ろに掲げられた
木炭画
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