メシアふたたび。/田中宏輔
る声には
お返事もなさらず
まるで
目の前のすべての風景が
ご自分とは関係のない
異世界のものであるかのような
虚ろな視線を向けられておられました。
わたしのこころは
わたしの胸は
そんなイエスさまをゆるすことができませんでした。
そして
そんな気持ちになったわたしの目の前に
膝を折り、跪いて祈るわたしの足元に
磔になられたイエスさまのおそばに
天の裂け目が
天の破れ目が口を開いていたのです。
目を落としてみますと
そこには
なにやら
眼光鋭いひとりの男が
カッと目を見開いて
こちらを見上げているではありませんか。
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