黒い光輪。/田中宏輔
ユダヤの王、イエス」と記された罪標が打ちつけられていた。
犬は、この長篇詩の狂言回し的な存在で、それが象徴するものは甚だ多義にわたっているが、まずは、アルファベットに注意されたい。DOGが逆さまになると……。この犬を盲目にしたのは、無知蒙昧な民衆の比喩である。また、犬に血を嘗めさせたのは、列王紀の第二一章、第二二章にある、悲惨な最期を遂げた人々の血を犬が嘗めたという記述から。また、これは、葡萄酒を血に喩えた、最後の晩餐におけるイエスの言葉にも符合させたものである。ちなみに、『イメージ・シンボル事典』の「dog」の項を見ると、サイコロの悪い目のことが「イヌ」と呼ばれていたらしい。
「そこには─
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