黒い光輪。/田中宏輔
 

死の湖(うみ)、死の水に魅入られた、男の貌(かお)であった。
その影は微塵も動かなかった。
ただ目を眩ませる水光(すいこう)に
目を瞬かせるだけであった。
「友よ。」
「えっ。」
見知らぬ男がユダに話しかけてきた。
「死の湖(うみ)を覗き込んで、いったいなにを見ていたのだ。」
「……、自身の影を。」
「それは死だ。」
「えっ。」
「それは、死自体にほかならない。」
──いったい、この男は何者なんだろう? 死神だろうか。
「それは、おまえの目がこれから確かめることになる。」
ユダは、こころのなかを見透かされているのを知って驚いた。
男は石を
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