年代記/本田憲嵩
 
つく太いつる草のように連珠されたさくらの花びら、それらはとても穏やかにターコイズブルーの空へと吸い込まれてゆく。まるでぼくらを祝福するかのように。そうしてその貴婦人とぼくはついに運命の再開を果たしたかのように熱い抱擁を交わし合ったのだ。けれどもその青あざやかな空の天蓋には開かれてしまったとても大きな天空の扉。花びらたちが巨大な旋風(つむじ)をつくって吸い込まれてゆくのもどうやら其処。その扉の奥からとてもまばゆい光が視えはじめる――。そう、かのじょもまた、

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消え去った貴婦人が残したものは例の少し茶ばんだ緑色の書物、けれどもそこにはもはや何も記されてはいない、かのじょの過去の秘
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