空を見上げる/岡部淳太郎
 
かと、お節介にも思うことはある。空が好きだから、ぬけるような青空や、様々な雲の形や、西の空の夕焼けや、色々に変化する空の色彩、そしてもちろん夜空に輝く星ぼし、空にあらわれるこれらの現象すべてが好きだからこそ空を見上げるのだが、空を見上げるという行為はそれだけにとどまるものではないと思う。空を見上げるということは、はるか遠くを見つめることでもある。空を見上げて、遠くを見つめて、自らの生の射程範囲を広げるのだ。普段の日常生活の中では、うつむいて歩いている人と同じように自分の周囲にしか気が回らないのだが、空を見上げることによって、自分とその周囲だけが世界のすべてではないことを知る。理屈ではなく、感覚によ
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