詩のこと、言葉のこと/由比良 倖
 
しての本が蓄積されていくのを待つしかないと思う。僕は僕で中也を持ち上げたけれど、それは僕の勝手で、誰にとっても、友達になれて、とても多くを学べて、語り合えるような本があればいいと思う。

 僕はいつも「僕はこれしきの詩しか書けないのか」とがっかりする。文章も、今書いている、この程度しか書けない。


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 日本語の美しさって、呆れかえるばかりだ。意識の表面に並んでいく、ささくれ立った言葉をあっさり捨ててしまって、心の深くから浮かび上がってくる言葉たちだけを信じること。夜の部屋、泡のようなLEDの光の中で、瞳孔が拡がっていく。拡がった瞳孔の奥に、本来見えないはずの遠い国の景色が見えて
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