某/あらい
 
どうしようもなくおかしくてしょうがないのだった
この夜行列車のラヂヲ放送は今夜も
「鈴のように転がる姿を見たことはなかったが…』からはじまり

軽快なステップを踏み越えて

明日の天気や今日あった事件
地方におけるほのぼの動物の生誕を
そういった心情のこもったアナウンスが
遠からず近からず距離を置いて
瞬く間に流されてつづけている

外は星降る雨に滲んだ海底を蛍火を散らしながら
思い出を引きずっていくような仄かな熱だった
窓を震わせるのはどうせ誰か何かを悼んでいるのだろう

今日はまたへばりつくような夏の香りを
硝子の青年が、
なみなみに継いで持ってきたものは
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