読むことのスリル──ひだかたけし小論(7)/大町綾音
行で詩を完結させてしまっても良かったのです。
ですが、この点には注意すべきでしょう。タイトルに「悪」という言葉を用いながら、詩の本文には「悪」という言葉は出て来ないのです。そして、果たして何が「悪」であるのか、この詩を一読しただけでは、読者は即座には判断できません。全文を引用できないので、わたしははなはだ心もとない気もちなのですが、「薄暗い……」で始まる序文を読んだだけでも、この詩が単なるアフォリズム……哲学を目指したものではないことが、分かっていただけるでしょう。
この詩は戦後詩の伝統に乗っ取った実存主義的な詩であるようにも思え、昭和初期の詩からシュールレアリズムの詩へとつながる、過渡期
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