ヒタキ/なつき
 
だけが信じ込んでいた

どうどう
風よ、そんなに暴れないでおくれ
どうどう
涙よ、そんなに溢れないでおくれ

振り返れば勝手な人生
それなりに我儘も通してきた
温もりも寂しさも酸いも甘いも
知っているつもりだった

君が最後のよすがだと知って
なおまだ今生に未練がある
君の居ないがらんどうを
どうやって埋めていくのか
それが解らなくて
僕は、年甲斐もなく
泣いた

それから季節は巡り
君は戻ってきた
少しふっくらとした面立ちも
柔らかな髪も
いつものオードパルファムの香りも
すべてが懐かしくて
新しくもあった

僕はまた新聞を読み始めた

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