深海で暮らす/ちぇりこ。
暮らすものには、聴き取れない発音で
もうじき梅雨が明けますね
そう告げて
ぼくの前から姿を消してしまった
夏が来た、夏は水を殺す季節
天真爛漫、とは程遠い熱の矢が
向日葵の瞳を溶かす午後
水の枯渇する午後に、その人は
どうしていたのだろうか
夏の間、ぼくの部屋を
とうとう訪れることは無かった
やがて夏も終わり、雨が降る
秋の長雨は幽霊の残滓のようで
雨に溶けだす街並みの寂しさ、呻き声
夥しい腕や脚が排水溝に流されてゆく
どうにも水が付き纏う
ぼくは、その人に会いにゆこう
雨の中を流されるように
その人の部屋を初めて訪ねる
存在するはずのない部屋を
水が流
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