どうか咲いていて/ホロウ・シカエルボク
。花を捨て、空缶を捨てると、やれやれという気持ちになって仕事に出かけた。その途中のことだ―割と大きな交差点で信号が青になるのを待っていた。俺と同じ通勤途中の人間が歩道のぎりぎりまで押し寄せていて、人混みが嫌いな俺は少し距離を開けて建物の側に居た。もう少しで信号が変わるというとき、焦って渡ろうとした乗用車がハンドル操作を誤って信号待ちの列に突っ込んだ。自分が見ている光景が現実なのかどうか信じられなかった。悲鳴、怒号、警察と救急車。蒼褪めた顔で立ち竦んでいる運転手らしき若いサラリーマン。俺は会社に連絡を入れて、事故の目撃者になってしまったので少し遅れる、と告げた。のっぺりとした声の事務員が、わかりまし
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