柔らかな硝子/暗合
だジッと俺を見つめる。
彼女はジッと俺の目を見つめている。
彼女の目は大きくて、美しかった。
口の中の血の苦さを強く感じる。
彼女の黒い目は、まるで夜の海のように、どこまでも吸いこまれてしまいそうで、俺はこの海で死んでしまいたいと思う。
俺は彼女を殺したくないと思う。
彼女を殺して生き延びるくらいなら、むざむざと死んでしまいたいと思う。
そう思うが、しかし俺は彼女を殺す想像を止めることが出来ない。
口から唾液がタラタラと溢れてこぼれる。
地面に落ちた唾液を見ると、赤色のものが混じっていた。
そして俺は彼女の首に食らいつ
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