「罪と罰」その読書感想から/ただのみきや
 
用=死育}
「死んでしまいたい」
     彼女はそう言った

晴れた雪野原で
どこからも足跡がないのに
大の字に寝転でいる
     そんなことばだった

彼女のことは嫌いだったが
今もそのことばと同衾している





80億

80億の正義感がいっせいに羽ばたいて
世界の空は詩と音楽で埋め尽くされた
ぬかるみには死んだ一羽のすずめ

正義感は世界に溢れていた
だれもが売りたがるので価格は暴落
今では80億正義感支払って
すずめの涙ひと粒
あの最期に見た日の出の輝きが溶け込んだ
涙ひと粒の正義も買えやしない

ほら素っ裸でナイフを
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