「罪と罰」その読書感想から/ただのみきや
で十分だ
轢死的瞬間
枯れすすきを踊らせて電車はかけ抜けた
街の方はもう雲が切れている
つめたい青空を一切れ額にあて
それをすぐさまノートに挟み込む
―――瞬間という栞
定型気取ってそぞろ歩く
冬枯れの種子の綿毛をそっと撫で頬の温みを分かつ者なく
ひしめいた夜の夢らもみな去って生ける伽藍の鳥籠となり
爪先の枯れた松葉を当てもなく空の重さに術もなければ
***
10分で歯顔髪髭終わらせる歳月のみが鏡に映り
道楽で苦悩買ったかその逆か詩人の財布に言葉はない
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