「罪と罰」その読書感想から/ただのみきや
だってこっちへ倒れ―――
のぞきと痴漢
恨み言に転生した
誰かの眠りの中で
赤い蟹の群れについばまれている
文読むひとよ
その裳裾をそっと捲り
ぼくはわずかばかり
他人の諍いを弁当に詰める
傷ひとつない
白くいびつなからだで
ぼくはぼくの戦争へ素早く蛇行する
橋の向こう
暗い空に落ちかけの虹
散り残った銀杏が光を振って
音もなくまろぶ鈴がある
裏地に隠した写真一枚
少女へのただれた懸想
縫い閉じていた
ことばと気持ちの糸もほつれて
祖母のタンスの抽斗に眠る
もう取り出せない幼心が
眠りの
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