小詩集・波/岡部淳太郎
 

新たな砂を付け足して恥じようとしないが
それがどうしたというのだろう
私は一億の昔からそうしてきたように
人の手が加わったこれらの砂も
変わらずに日々さらって
削り取ってゆくだけだ}


波 5

{引用=私はとおい

どこか誰も知らない海で
誰も訪れたことのない渚に
海の水を届けるだけの存在
それが私

この世の果てのようなそんな場所で
私は寄せていっては
返ってゆくだけであり
私のことを知る人など一人もいないのと同じく
私は人々の織り成すこの世の出来事のことなど
まるで知らない

それは とおいとおい場所の出来事

私はとおい
ただとお
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