小詩集・波/岡部淳太郎
頼りないものよ
おまえたちをさらって
海の水に溶かして
海の底の
無意識の夢のようなところまで連れてきたのは
それを日々飽きもせず繰り返してきたのは
まぎれもない私だった
この地の一部を少しずつ
こそげ落とすように
削り取ってきたその行為は
私のためでもなければ
ましてや砂よ
おまえたちのためでもなかった
それはただの自然の摂理
私が波であり
おまえたちがその頼りなさゆえにさらわれやすい
砂であるからというに過ぎない
こうしておまえたちをさらって削り取ることで
一つの小さな国土が縮小してゆくが
それは私の知ったことではない
人はなおも私がさらった上から
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