歓喜の歌から逃げだして/ただのみきや
 

かすかな熱 浮かぶ蝶

吐息が咬み付いて
白く曖昧な顔ひとつ
車にはねられ
    空は剥がれた





出血

秘密は血の中に隠せ
自分の内に巡らせよ
開いた傷から
雄弁に流れ出る
いのちの熱量で    
だがすべては隠喩
華々しい鮮血は
黒く凝固して
封印となる
秘密は業
―――偏り 欠け 尖り
つり合う呼び名もなく
ただ詩語を纏いたがる





影追うもの

自分らしさを追い求めるのは
ひとりぼっちの影踏みあそび
お日さまに背を向けて
うつむきながら追いかける

影の顔をのぞきこんでも
顔色ひ
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